虫食い林檎と車のある風景 -15ページ目

ヤーヤーヤー!虫食い林檎がやって来た!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Power Macintosh8100のノンリニア編集システム。
まず、使った事の無いコンピュータに慣れるためにも
Macintoshを手に入れたかった。
しかし、本体で80万円。高すぎるハードル。どうしたものか。
Power Macintosh8100以外にもMacintoshは発売されていたが、
Media 100 は対応してはいなかった。
非対応のMacintoshでも、当時おおよそ40万円。
後で買い替えるにはやはり出費が大きすぎる。

この1年後Appleコンピューターは新商品を発表した。
パフォーマシリーズの新ラインナップ。
CPUにPower Macintosh8100と同類のPowerPCを搭載、
前シリーズのパフォーマより約80%の処理速度アップ。
本体、モニタ、沢山のソフトが付属してワンパッケージだった。
何よりその価格が魅力的だった。
プリンタセットでおよそ20万円。
・・・近くのコジマ電機でローンを組んだ。

(今でこそ最新のMacが¥58,590で購入できる。
 そのままデジカムを繋いで簡単編集。いい時代だ!)


もちろん買う前に色々と調べた。
Media 100 は対応していないが、ノンリニア編集用のボードが
発売されていていた。
性能こそMedia 100 に追いつかないが、更に安価に環境が整う、
自分の手で編集ができる、心が躍った。

注文してから5日が過ぎた頃、パフォーマ6220が届いた。
しばらくパフォーマの使い方を覚える為、
目指すビデオ編集はそっちのけ。
オイラの周りにMacintosh使ってるヤツなんぞ誰もいない。
コリャ・・・苦労しそうだ・・・

電子画像式 水先案内箱の取り付け

奥さんの愛車、日産パオの「ハンドルが取られる」「共鳴」の症状は
タイヤが原因だった。中古で入手したアルミホイールとタイヤに交換し
真っすぐに走る車になった。(戻った?)
ようやく奥さんのリクエスト(言い分)を潰せる段階に・・・。
道が解らない・・・。
車の幅が解らない・・・。
2つめの「車の幅」はぶつけるの覚悟で乗ってもらわんとネェ。
これは奥さん自身の問題だから却下だヨ。
でも、道が解らないのは問題かな?
行ったきり帰ってこないのも、それはそれで笑えるんだけど・・・。
地図で道を覚えても、自分がドコをドッチの方角に走ってるのか、
それが解らないと同じ事だろうし・・・。
オイラは目的地やら土地がニオイでわかるから、奥さんの気持ちは
理解しがたい部分もある。
ん!でも、しょうがない。ちょっと奮発すっか。

パオに乗って近くのオートバックスへGo!
店頭に並んでいたパイオニア製カーナビを即買い。
DVD「楽ナビ」DR-2000(当時のメーカー価格¥158,000-税別)
ハードディスクのカーナビも出てはいたが、値段が35万円。
店頭価格が¥99,800-だったから迷う事も無し。
性能もDVDで十分でしょ。(笑)

お持ち帰りで早速取り付け。
まず、レイアウトを確認。DR-2000はモニター部、本体部に大別される。
モニターは当然ダッシュボード上に。
本体は運転席シートの下に取り付ける事にする。
DR-2000は今のナビと違い、DVDの映画の再生、音楽再生の機能も無い。
だから本体はどこに置いても操作上問題がなし。
本体のレイアウトのイメージが出来たら、後は配線を通すイメージ。
屋根後方に貼付けるTVアンテナはハッチから室内に取り込んで前へ。
本体から伸びる電源線の常時電源、アクセサリー電源、
イルミネーション電源をダッシュボード下側に。
同じくGPSアンテナとビーコン線をダッシュボード上へ。
車速センサー線とバック線を助手席側に引くイメージ。
最後にモニターから直に出ているRGB線を前から本体に引いたら完了。
ん、簡単そう。v(=∩_∩=)

実際の作業はボルト4本を外して運転席シートを外す。
(写真は本体をシート下に設置、助手席にあるのがモニター部)
フロアカーペットを少し切って、配線を通す。
ドア部分のサイドステップをバラして、フロアカーペット内に
手を突っ込んで配線を通して行く。
部分的には「おりゃ!」と気合いも必要。
各配線をポイポイと繋ぎ、作業は4時間くらいで終了。
エンジンキーをひねって、電源オン。
動作も異常なし、テレビも映るし、完璧じゃん?

奥さんにキーと説明書を渡して、オイラは昼寝なら夕方寝。
起きたら夜中だったりして・・・・。

次のお休みの日、富士山まで、パオで初のドライブ。
もちろんナビで行き先設定をしましたです、はい。

米国からやってきた虫食い林檎

ある日の朝、社長がチケットを手に1階の機材室に降りてきた。
社長はめったに1回に降りてはこないのに。
曰く「デスクの日、やる事無いのならココ行って勉強してこい。」
手渡しで受け取ったチケット。・・・「放送機器展」・・・
この会社には「デスク」と呼ばれる日があった。
取材や撮影のないスタッフが会社でタムロする日・・・。
怒られるな、この言い方は。
つまりは、稼働しない機材を掃除したり整備したり、また、
万一、故障した撮影機材を現場に届けたり、穴があいたスタッフの
代わりに現場に向かったり。と聞こえはいいけれど。
結局はタバコ吸って喋って時間を過ごすみたいナ。
それは置いておいて、
映像撮影に関わる仕事なのに、どうせなら映画のチケットぐらい持って
「この監督とカメラマンのの画作りを学んで来い!」くらい言え!
文句を言いながらも、空いてる機材車に乗り込んで会場に向かった。
都内臨海地区の逆三角形の建物。
中に入るとカメラや三脚、VTRや照明機材など、ブースごとに奇麗に
並んでいる。
ソニーや池上など、最新のハイビジョン対応のデカイカメラ。
名刺を置いてカタログをもらって行く。
何故か、カタログやブースにも価格表示は無い。業務用だからか?
ちなみにカメラ単体で1000万円以上、レンズを付けると1500万円。
安いんだか、高いんだか・・・。
会場には人は疎らで、ゆっくり見れるのだが、コンパニオンさんも
すっごく大人しめ。仕事がらみだからほとんどがスーツ姿。
つまらない・・・。着々とカタログの部数だけは増えているのだが。

一番奥手のブースに白いコンピュータがちらっと見えた。
「例の  Amiga  かな?」ワクワクしながら近づいて行く。
コンピュータの脇にはモニターが2台。
前に見た  Amiga  の様にコントローラーは無く、キーボードのみ。
メインの大きめのモニターには編集された映像が映し出され、
小さいモニターには何やらいくつかの枠付きの画像と表のような表示。
はっきり覚えていないが Media 100 という機材のブース。
(だったような)
この当時はノンリニア編集の創世記で、まだ取り組む企業も
日本では皆無。もっぱらアメリカの企業製品を代理店が紹介する、
Amiga が日本で活躍してても、まだまだそんな時代であった。
Media 100はコンピューターに内蔵して使う機材を作成していた。
使用されていたコンピューターがPower Macintosh8100。
タワー型の白い個体の下側に小さな6色りんごのマーク。
よく見れば・・・六色りんごは何かにかじられていた。
担当の人にしつこく話を聞く。
「このコンピュータはいくらします?」
「コンピュータは販売してませんので・・・」担当者。
「じゃ、全部でいくらかかるんです?」
「おおよそ300万円くらいは。」担当者。
「300万円・・・」
Amiga と同じ編集はできますか?」
Amiga って何ですか?」担当者。
「・・・」
「良かったら、触ってみて下さい。」
「・・・」(コンピュータ触った事無いもん)
「あのですね、これが編集プロジェクトウィンドウで、
 サムネイルをココに読み込ませて・・・」
「・・・」(チンプンカンプン)
「速度はCPUに依存してますから・・・(延々親切な説明)」

説明に形だけうなずいて、相づちをうつオイラ。
すごくはずかしかった・・・。
でも、
リニア編集で 1億円の機材が、 Amiga の登場で800万円、
そして目の前のMedia 100で300万円。
夢で終わるはずだったビデオ編集が、夢だけで終わらない、
そんな期待感。

会社に戻り、そのまま本屋に駆け込む。
コンピュータとビデオ機材の雑誌を買い込む。
そして初めて「apple」コンピュータの名前を知った。
機材展で使われていたPower Macintosh 8100の価格も・・・
¥800,000-
オイラの給料何ヶ月分だヨ!コレ。
新車で日産マーチが買えるジャン・・・。
しょっぱなから、相当に高いMacintosh本体。
「夢で終わるはずだったビデオ編集が、夢だけで終わらない、
そんな期待感」・・・はやはり夢だった。

共鳴音とハンドルが取られる原因

パオが宇都宮からやってきたのは12月。
奥さんは免許を取って車も来たのにあまり乗らない。
どうして?

奥さん曰く、
道が解らない・・・。
車の幅が解らない・・・。
返す言葉がなかった。

「教習所と同じ車なら乗れるのに!」胸を張って言う。
それは車に慣れるしかないでしょう?
慣れるには運転しなくちゃ慣れないんじゃない?
色々説明するけど実際は怖いらしい。
陸運局事務所でさ、自分でナンバーまで取り付けたんじゃないの?
パオでドライブするのが夢だったんじゃないの?
なだめて、すかして奥さんを運転席に乗せる。
オイラは助手席に乗り込んで、道を案内。
これで完璧じゃないか。うん。

近くをグルグルドライブ&お買い物。
「2つ目の交差点を左ね」&「もっと左に寄って!」
「もうすぐ右に曲がるから内側の車線ね」&「ほらぁ~、
もっとスピード出さないと、車線変更できないよ!」
家にたどり着くと、奥さんは疲れてヘロヘロ。
おいおい、まだ20Kmも走ってないけど・・・どうしたの?。
・・・原因はオイラだったらしい。
隣で道案内してくれるのはいいけど、運転をあぁだこぅだと
言われるのがかなり疲れるんだとか。(笑)
「車の運転の仕方を教えてやってるのに」とオイラ。
「でも、自動車教習所で運転してる時より疲れるんだもん。
言い方すごく怖いし」またもや返す言葉が無かった。
あぁ、オイラは人に教えちゃいけないんだなぁと実感・・・。

何にせよ、我が家に来たままの状態のパオ。
全くのノーマル(日産の工場から出荷されたままの状態)
ハンドルやタイヤを交換すれば、それだけで立派なカスタムカー。
世の中に1台だけのオリジナルとなる・・・と信じてるオイラ。
まずはアルミホイールとタイヤ、つまりは「足もと」から
お洒落をしてみよう!(人の靴のお洒落と同じ感覚?)
タイヤをインチアップして、ウニャウニャした乗り心地を
少しでも固くするのも狙い。
155/80R12という標準タイヤのサイズを175/60R13くらいに。
近くのカーショップやインターネットで商品を物色するが、
今時のホイールは廉価版が多く、みんな銀色塗装されている。
ちょっと個性が無いかな?
アルミホイールの素材を生かしたタイプは値段が高い高い。
タイヤとホイールで6万円くらい。価格で奥さんからNGが出る。
うーん、こうなったら奥の手。
近くのポンコツ屋(解体業者)を次々に廻る。
4件目、積まれた解体されるエンジンの中にMA10型を発見。
パオは初代の日産マーチがベースの車体だから、もしかしたら
ホイールもあるかもしれない。
「パオに着けられるホイールありませんか?」
ブレハブ倉庫の高い棚にタイヤとホイールが載っていた。
「安くするから持って行ってよ」
60年配の社長がハシゴを差し出して言った。
え?オイラが棚から降ろすの?

降ろしたタイヤ&ホイールは案外奇麗でデザインもGood。
値段は¥20,000-だって。う~ん微妙な価格。
タイヤの溝はまだあるんだけど、サイズが185/60R13・・・。
ワンサイズ大きいよ、コレ(。_。)q
社長は大丈夫っていうけど、値切った結果¥16,000-。
ゲット!v(=∩_∩=)
早速、購入したタイヤに交換。ノーマルのタイヤを外して・・
あれ?タイヤが変形してるゾ。
路面と接する部分(トレッド)が山形に変形して、一回り大きく
膨らんだ状態。それも右側のタイヤ2本。
専門的に言うと「トレッドセパレーション」っていう現象で、
タイヤの中のワイヤーが切れて変形してしまう状態。
もちろん、このままの状態で走り続ければ最悪、バーストや
事故にも結びつく。
なるほど、
左にハンドルが取られたり、車体の共鳴はタイヤが悪かったんだ。
新しく購入した中古のタイヤ(微妙な言い回しだけど)に交換後、
まっすぐ走るし、共鳴も無い。\(^o^)/バンザーイ

ただ、
タイヤが太くなった分、ハンドルがチョビっと重くなったかな。
・・・奥さんには内緒にしとこう。

25歳の転機と「アミーガ」との出会い

オイラが25歳になった時、それまで勤めていた車関係の会社の
営業所が閉鎖になった。
勢いで会社も辞めてしまった。(笑)
さてさて、次はどんな仕事をしようかと、今では懐かしい
「日刊アルバイトニュース」なる書物を日々読みふけっていた。
ありきたりの仕事はしたくない!なんて息巻いていた。
今思えば 馬鹿まるだしの貧乏根性 ってなもんか。

「TV局の技術、番組制作、及びアシスタント」
ん??(°_。)?面白そうじゃん?・・・
本当に軽い気持ちでTV業界に飛び込んじゃった。
現場初日から「バカヤロー」の罵声の洗礼。
右も左もワケわからず、何をして怒られたのかも理解不能。
今まで培ったプライドも捨て去らないと、
やって行けない厳しい現実の業界。後悔しきり・・・

思い切りぶつかって、現場で鍛えられて、それでもまだ
カメラアシスタントの領域から抜け出せないペーペー。

・・・半年くらいした日の事・・・。
新宿で街頭インタビューの収録後に、大久保にある
とある専門学校に案内された。
その学校には最新の設備と機材が納品されていて、
プロダクションや放送局にも機材をレンタルする事もあると聞いた。
その校内のひと部屋にモニターが4.5台並んだだけの
小さなビデオの編集室があった。
その編集室には1台だけのVTRがあるだけだった。
あまりにも簡素すぎる機材の構成。
通常、ビデオ編集にはVTR(ビデオデッキ)が最低でも3台ある。
再生用VTRが2台、録画用が1台は必要なはず。(ABロール)
しかも、
業務用のVTRは家庭にあるVTRに比べればバケモノみたいに大きい。
大人二人で持ち上げるくらいの大きさと重さ。
3台並んだり、重なっていたりすればかなりの存在感だから、
1台だけって言うのは寂しいような、成り立たないような。

編集が始まった。
1台しか無いVTRは動かないまま。モニターには編集される画像。
「あれ?どうして画像がでてるんだ?」不思議そうなオイラに
同じ会社のカメラマンの原田さんが説明してくれた。
「コンピュータに画像を取り込んでから編集するんだ」
ん~、さっぱりチンプンカンプン。

会社に帰ってからTV技術書などで調べに調べた。
ノンリニアで編集
今でこそ、Macintoshの「iMovie」などはあたり前だけど、
当時はまだまだ認知度も無く、難しいとされていた技術だった。
通常、動画の画像に動画を重ねて合成し、やわらかく場面を変える
ディゾルブなどは、VTR1で最初の動画を再生し、VTR2で
後半の動画を再生。エフェクターという機材でリアルタイムに
ディゾルブをかけて、録画用VTRで録画する・・・という方法。
業務用VTRが1台500~800万円、総額1,800万円。
エフェクターが数千万円、
エフェクターのコントローラーが数百万円。
これらを同期させる機材が数百万円。音のミキサーもほぼ同額。
総額で1億円くらいの機材が無いと、ビデオ編集は出来なかった。
これが「リニア編集」。
一方の「ノンリニアで編集」はコンピューターとビデオ圧縮ボード、
それとソフトウェアがあれば同様の編集が出来るという・・・。
しかし、
世はWindows95もまだ出ていない時代。Windows3.1が主流。
Macもまだ漢字Talkの初期で、到底コンピュータでビデオという
観念はなかった。(と思う)

それを可能としたコンピュータが当時存在した。
Amiga (アミーガ)というコンピュータとビデオトースターという
ビデオ圧縮ボードの組み合わせ。
総額で800万円。恐ろしく高い。
それでもリニア編集の機材代(1億円)に比べれば・・・。
何より、その編集しているモニターの画像の滑らかさと
見た事も無いエフェクトの多彩さに圧倒されていたオイラ。
「もし、このシステムが自分の物なら・・・」
ドラえもんのポケットの様に、画像が何でも出てくる、
そんな夢を見た。
しばらくは「Amiga」が頭から離れなかった・・・

その3年後、「放送機材展」で虫食い林檎との出会いとなりました。